たまご焼きの塩加減
「たまご4個に塩1㏄」と覚えておきましょう。たまご焼きをつくるときに、塩をどのくらい入れますか? レシピを見ても「塩少々」としか書かれていないことってあります。「少々」って、どんな量?(*1)
「適宜」(*2)なんて書いてあったら、お手上げです。
だいじょうぶ。「たまご4個に塩1㏄」と覚えておきましょう。だから、たまご2個なら塩0・5㏄です。
料理での調味料の加減は味に影響してきます。砂糖は、少しくらい多めでも少なめでも、甘さの好みは違いますが、食べられないことはありません。その点、塩だけはキチンと使わないとおいしくなかったり、食べられなくなってしまいます。「塩梅」(あんばい)という言葉がありますが、これは辞書風に言うと「味の基本である塩と梅酢」の意味で、「料理の味加減」のことです。「塩梅を間違えたら、とても食べられたものではない」などと使います(*3)。つまり、味加減の基礎は塩加減になるということでしょうか。
汁もの・煮もの・炒めものの場合は、塩加減を薄めから始めて、味を見ながら足していけるのでいいのですが、たまご料理ではそれができません。そこで覚えておきたいのが「たまご4個に塩1㏄」。
塩味の調味パーセント(材料の分量に対する塩の割合)は「0・9%塩分」が基本にされています。
これは人の体液と同じ濃度の塩分濃度が適当という考えによるものです(香川綾など)。その説には疑問もありますが、実際に塩加減を味わってみると、結果としての数値は妥当かも知れません。というわけで、「0・9%塩分」を採用してみます。
そして、たまごはそれ自体に0・3%の塩分(*4)を含んでいるので、差し引き「0・6%塩分」が適量となります。でも、やや塩分控えめにして「0・5%塩分」にしてみましょう。計量の仕方や、たまごの大きさなどで誤差が生じても、やや薄めならおいしく食べられます。
たまごの中身の重量は1個が50グラムくらいですから、その0・5%は0・25グラム。4個で1グラムになります。いちいち重量での精密な計量はできませんが、塩の比重はおおよそ1ですから「たまご4個に塩1㏄」と覚えておけば簡単です。
1㏄を計ることができる計量スプーンがあります。たまご2個なら半分、1個なら4分の1です。ごく少ない量なので難しそうですが、指を使ったり、勘に頼るより確実に適量の塩加減ができるはず。
写真のピンク色のスプーンと白いスプーンが1㏄の計量スプーンです。ステンレスの計量スプーンは「小さじ」(5㏄)です。ピンクのスプーンは女子栄養大学が開発したものですが、円の直径が大きいため誤差が生じやすいので、白いスプーンのように直径が小さくて深さがあるものの方がおすすめです。また、工芸用のもので0・1㏄が計れる極小スプーンもあります。
*1…普通は「親指と人さし指でつまんだ量」とされています。*2…適当な量と読めます。分量に幅があるときなどに用います。*3…この言葉は「物事の具合・様子」、「身体の具合・様子」、「物事の具合・様子を考えて、ほどよく並べたり、整えたり、処理したりすること」としても使われています。この場合は「案配」とも書きます。*4…含有ナトリウム量から換算した食塩相当量。
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チャンプルー
沖縄料理といえば「チャンプルー」が一番ポピュラーなようです。朝はおうちでチャンプルー、昼は食堂でチャンプルー、夜は居酒屋でチャンプルーと、連ちゃんチャンプルーというお話も聞くほどです。では、ここでQ。
「そんな沖縄のシンボルのようなチャンプルーですが、チャンプルー料理の名前をどれだけ挙げられますか?」
う~ん。ゴーヤーチャンプルー・マーミナチャンプルー・タマナーチャンプルー・らっきょうチャンプルー・チキナーチャンプルー・豆腐チャンプルーなどの名前をあげられる人も少ないはず。ソーミンチャンプルーもこの際、認めましょう。でも、こうして数えてみると種類は意外と少ないのです。料理の本を見ても、ほかに、いんげんチャンプルー・クレソンチャンプルー・チリビラーチャンプルーくらいでしょうか。
野菜と豆腐を組み合わせた炒めものなのですから、もっともっとあってもいいはずです。白菜・なす・ほうれんそう・ピーマンなどもおいしそうです。しかし、白菜チャンプルーやなすチャンプルーなどは聞いたことがありません。
以上のように、
(1)チャンプルーは種類があまり多くありません。それから、
(2)味付けは塩と醤油だけで、単調で味わいに深まりがないと言ってもいいでしょう。また、
(3)メインになる野菜の名前を付けて呼ぶため、その他に使われる食材数が少なく栄養素のバランスもあまりよくない…という意外な事実も明らかになるのです。
これらのチャンプルーの欠点を補うために、ここで「オリジナル・チャンプルー」を提案することにします。
(A)食材の種類を増やして組み合わせを楽しむ、
(B)香りと味付けにちょっと手間をかける…だけです。食材が増えるので、当然、栄養素のバランスもよくなります。具体的には、
(A)豆腐のほかに、メインの食材は2種類以上にすることをおすすめします。できれば、「五目」や「七色」くらい使うといいでしょう。野菜はもちろん肉・魚介・玉子・きのこ・海藻などなんでもいいのです。もっとも、なんでもポークやツーナーを入れる人もいますが。「アサリとシメジと島にんじんのチャンプルー」なんて、なんかパスタのようで、名前を聞くだけでおいしそうです。
(B)チャンプルーにも中華料理やイタリア料理などのように、香りの味付けを加えてみましょう。ねぎ・にんにく・しょうがのみじん切りなどを最初に炒めるだけで香りと風味が違ってきます。次に調味料を塩と醤油だけに限定しないで、いろいろ使ってみましょう。油も食材によってラードやオリーブオイルなどを使うのもGOODです。
気楽に気軽につくれるのがチャンプルーのよさです。だからこそ、既成概念に縛られることなく自由な発想で、おいしい料理を見つけたいものです。
今回の「オリジナル・チャンプルー」は「家常豆腐」(ヂアチァンドウフウ)です。
「家常」とは「家庭」のことで「家常菜」(菜=料理)は家庭風の料理なのですが、家庭料理にとどまらずそこから発達した料理を意味しています。それぞれの家にはそれぞれ違った独特の味わいの料理があるのです。だから「家常菜」には唯一のレシピはなく、それぞれがオリジナル料理なのです。前置きが長くなりました。
(1)ねぎ・にんにく・しょうがは好みの量をみじん切りにします。
(2)豚肉・厚揚げは薄く切ります。干ししいたけは軸を除いて水で戻し斜め半分に切ります。にんじん・キャベツ・ピーマン・赤ピーマンなどの野菜は好みの大きさ・形に切ります。
(3)フライパンを熱して油をひき、ねぎ・にんにく・しょうがを炒めます。豆板醤を加え炒め香ばしさを出します。
(4)豚肉・にんじん・厚揚げをフライパンの面に接触するように並べて順々に焼きます。ゴチャゴチャに混ぜると均等に加熱しにくいのです。キャベツ・たけのこ・しいたけも加えて炒めます。
(5)紹興酒・醤油(少なめに)を加えて炒め、だし(豚肉をゆでたときの汁でよい)を加えて煮込みます。ピーマン、赤ピーマンは後で加えます。
(6)醤油を加え、好みの味に調えます。
(7)水溶きかたくり粉でとろみを付けます。できあがり。
*この「ピリ辛チャンプルー中華風」は「知味 竹爐山房」(ちみ ちくろさんぼう)の山本豊さんの「家常豆腐」を参考に考案したものです。
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