「ンムクジプットゥルー」って知ってますか?
魔法使いを呼び出す呪文ではありません。ちゃんとした料理の名前です。なんだかわけがわからない名前なのに、一度覚えたら絶対忘れられない不思議な名前で、料理の姿形もそれに負けないくらい不思議。
沖縄旅行大好きナイチャーの必読雑誌『沖縄・R島情報』で、かつてこのンムクジプットゥルーは「沖縄料理・ネーミング大賞」に輝いたほどです。「ドゥルワカシー」や「カタハランブー」なども太刀打ちできない名前ではないでしょうか。で、このンムクジプットゥルーを知っている人は偉いから三重丸。ンムクジプットゥルーを食べたことがある人は、なお偉いから花丸をあげましょう。でも、「じゃぁ、ンムクジプットゥルーつくれる?」と問われたら、手を挙げられる人はほとんどいないはず。あの形状を出すには、よほど修業を積まないとダメさーと思いきや、じつは「超カンタン」なのです。その証拠に、台風時にはソーメンチャンプルーやヒラヤチーと並ぶ、ファストな手づくりフードだったのです。
ところで、名前の由来は?というと、「ンム」は「おいも」のことです。「クジ」は「くず」で、これは「屑」じゃなくて「葛」のことです。つまり、「ンムクジ」は「さつまいものデンプン」というわけ。片栗粉の沖縄版ですね。「プットゥルー」はそのデンプンが加熱されて、ゲル状にプルンプットゥルーンと半かたまりになった状態を指すようですが、定かではありません。ちなみに、ソーメンチャンプルー(正しくは「ソーミンタシヤー」)のことも「ソーミンプットゥルー」と呼ぶことがあります。また。「プ(PU)ットゥルー」は「ブ(BU)ットゥルー」ともいいます(PUとBUの違いです)。食べさせてくれるお店はなかなか見つからないだはず。だから、自分でつくってみましょうね。
ンムクジをンムからつくるのはたいへんです。だから、市販の「いもくず」を買い求めます。あとは、これを水に溶いて、塩気を調えて、フライパンで焼くだけです。でも、これだけではちょっと味気ないので、水のかわりに「だし汁」を使い、ニラを加えてみました。好みで、冷蔵庫の余りものを入れてもけっこうです。ツナやカステラなどが入れば上等。玉子を入れる人もいますが、これは邪道のような気がします。
●材料……ンムクジ(いもくず):1カップ だし汁(水でもよい):2~4カップ 塩・しょうゆ(みそでもよい):適量 ニラ:好みの量 油:少々
その他(ありあわせのもの)
(1)ンムクジは粉ではなく、粒々になっています。水で簡単に溶けますから、網やザルでふるう必要はありません。
(2)ニラを水でよく洗い、2~3cmくらいの長さに切ります。
(3)だし汁または水に塩気を付けます。だし汁の量はカップで、ンムクジの2~4倍ですが、これは好みで、もっと多くてもかまいません。ただし、塩だけはテーゲーだと、とんでもないことになります。塩分は水分の0.8%を目安にすると失敗がありません。水が2カップなら、
200(㏄=g)×2×0・008=3.2(g)という計算です。塩分約15%のしょうゆは、小さじ1杯(5cc)が塩分約1gに相当しますから、まず小さなティースプーンで3杯入れて、実際に味を見てから、調整します。みそは塩分が10%くらいですから、小さじで5杯ほどです。
(4)ンムクジとニラを入れて、よく混ぜます。ンムクジはすぐに沈むので、フライパンに流すときに、また混ぜてください。
(5)フライパンを加熱し、油をひき、ンムクジの汁を流し込みます。かき混ぜながら焼きます。いくら焼いても、かたまらないのが不思議ですが、白っぽい汁が半透明なプルプルに変化してきて、いかにもプットゥルーになったらできあがり。
(6)お皿に移して、めしあがれ。ハシでも食べられます。アチコーコーがおいしいですよ。水分を多めにしてつくったときは、スプーンなどでめしあがれ。